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ステロイドってこわいんですか

ステロイドって怖いんですか?…きちんと使えば怖いことはありません!

ステロイドというお薬は、名前を聞くだけで「なにか怖い薬」というイメージが強いと思います。しかし本当は、医療の世界では大変に大切な薬であり、発見によって医学、治療は飛躍的に発展したという背景があります。

もともとステロイドは、私達の体の中、腎臓の近くの「副腎」というところから分泌されているホルモンです。また、ホルモンとはそもそも体内の生理活性物質という意味があります。つまり、とある臓器で生産され、他の臓器や細胞へ回収され、その運ばれた先で代謝やエネルギー産生などに関わって色々な役割を果たします。

例)成長ホルモン…脳の中の脳下垂体のさらに前葉というところで産生され、骨や筋肉といった標的器官に回収され、細胞の合成を促進させます

同様に、ステロイドは体内の色々な組織において、エネルギーの代謝や、多種多様な化学反応に大変重要な役割を果たしています。

特に、糖分・エネルギーの生産、炎症の抑制など、ストレスを抑え込んで体を元気にする作用があり、体内で欠乏すると逆にそれがうまくいかず不具合が発生します。

もともと体の様々な部分に影響を与える性質のある薬であるため、全身に作用する使い方では注意が必要となります。特に、糖尿病、高血圧、B型肝炎、胃潰瘍、(隅角閉塞性)緑内障、白内障、結核の既往のある場合は注意が必要となりますが、正しい方法で付き合えば大変有効な薬剤です。(もともと糖尿の方であれば血糖値が一時的に高くなり、血圧も同様に高くなります。眼圧もあがることがあり、もともと眼圧が高い方も注意が必要です。)

どういう使い方をするの?

まず、耳鼻科で使用される際には、感染に伴う、むくんだようなのどの腫れなどの強い炎症を抑える効果を期待して使用することが多く、期間を限定し副作用に注意しながら使用します。のどの腫れは、稀に怖いことにつながります。というのは、強い炎症がのどの奥で起こった場合、内側へ腫れて息の通り道が狭くなったりすると、これはそのまま「窒息」という恐ろしいことにつながります。最悪、窒息死するか、それまでに緊急で、のど仏あたりの部分で腫れていたらより肺に近い場所で穴を開ける「気管切開」という手術を速やかに行わないといけないこともあります。ですので、すでに食事ができないような強いのどの痛みを伴うような扁桃炎では、抗生剤と並んで強い抗炎症作用を持つステロイド剤が点滴などで効果を発揮する場面となります。

また、アレルギー分野であれば、点鼻ステロイドは非常に有効な薬剤です。鼻の粘膜という局所だけに作用するように設計されており、長期に使用していても全身への影響はほぼないとされています。また、当院でもたくさんの方にお使い頂いております(※モメタゾン、ナゾネックス、アラミスト、エリザスなど)。

そして、顔面神経麻痺や突発性難聴でも使用します。これらの疾患で高度な場合、特にご高齢の方などにおいては、休養と副作用の監視のためも兼ねて入院していただき、モニタリングのもとでやや多量に使用することがあります。概ねプレドニン換算で120mg~80mgくらいから少しずつ、2・3日ずつ減らしていくような「漸減療法」という形で使用することが多いと思います。末梢性顔面神経麻痺では顔面神経管という骨のトンネルの中で腫れた神経のむくみをとる、突発性難聴では働きの落ちた神経の復活をサポートするような効果を期待して使用することが多いと思います。

ステロイドも量と種類、投与期間を適切に選択が大切です!

量と期間などをきちんと選択していれば、(もちろんゼロではありませんが)怖い副作用はめったに起きません。

副作用が起きるきっかけとして有名なのは、長期間服用していて突然やめる場合です。お薬として内服し、長期間外部から補充されている状態が続くと、脳が「体内のステロイドの量は充分だ」と勘違いし、副腎からの分泌を減らすよう命令します。そうすると副腎は自分でステロイドの産生を行うことを一旦やめます。そのまま服用を続け長期経過した状態で、突然内服をやめると、脳から副腎へステロイドの増産が命令されますが、今まで休んでいた副腎は、今まで休んでいたせいもあって突然ステロイドの分泌量を増やすことができません。

結果として体内では必要なステロイドの量が供給できず、欠乏するため「リバウンド」という現象が起きます。今までステロイドで抑えていた症状が抑えられなくなり、強く悪化して現れる現象を指します。

膠原病など、疾患の性質から本来は長期に内服を継続しないといけないのに、突如やめてしまうと、症状が以前よりさらに悪化して現れる場合があります。そして、これがその昔、アトピー性皮膚炎の塗り薬でテレビに取り上げられ、非常に問題視され、怖いイメージだけが残ったようです。

繰り返しますが、耳鼻科の一般的な使用方法できちんと使えば、めったに問題はおきません。

確かに、突発性難聴なのでステロイドを使用したご老人が、しばらく血糖値が高いままだとか、血圧が少し高いままで経過するといったようなことはありますが、こちらは血圧を落とす薬や、糖尿病のお薬を調整するなど内科の先生に依頼して、事なきを得る…といったことが大半です。

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