メニュー

睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

OSASとは

うるさいいびきを放置しないで!息が止まっていませんか?

「いびきがうるさい」といわれた事がある方の受診をおすすめします!

酔っ払ってねていたり、疲れていたりといった時だけ「いびきがうるさい」と言われたのであればそこまで心配しなくてもよいかもしれません。
しかし、「いびきがうるさい上に、しょっちゅう息も止まっている」などと、呼吸が止まっているように家族の方に言われた方、つまり睡眠中の呼吸停止が目撃されたことのある方はかなり要注意と思います。というのは、「睡眠時無呼吸症候群」という病気で、治療が必要な可能性が高いからです。

いびきには、みつかりにくい病気がかくれていることがあります

大部分(8割強)の方は、「無症状」、つまり寝ているときのことなので自分ではわからず、非常に見つかりにくい病気です。代表的な自覚症状は、夜間のいびきと、昼間の強い眠気なのですが、体が慣れてしまっているせいか、眠気を感じない人も相当数存在するといわれています。また、単なる疲労や加齢による体力低下と混同されている方も多くいらっしゃいます。眠気や倦怠感の客観的な評価は困難であることから、治療開始後、睡眠の質が高まって初めて自分に負担がかかっていたことに気がつく人もおられます。

日本国内の、睡眠時無呼吸症候群という病気に対して「CPAP:シーパップ」という、睡眠中の呼吸の補助器を必要としている治療中の患者は61.7万人(2019、厚労省)という調査結果がありますが、未治療の方はおよそ400万人前後と予想されています。

つまり、たくさん患者さんがいるのにも関わらず、適切な治療にしっかりとたどり着けている患者さんは、この数字からすると全患者さんのうち2割にも満たないわけです。軽症の方も含めるともっと未治療患者は増えるものと想像されます。それくらい自覚症状があてにならず、みつかりにくい病気です。

典型的には肥満・首が短い(=メタボ、お相撲さん体型)に多く見られ、つまり「太ったおっさんの病気」として有名だったのですが、近年そうでもないという認識がひろまっています。およそ、患者さんの1/3くらいの方は非肥満の普通体型や痩せた方で、なかなか疑われることもなく、そう発見されません。

若い頃(20代)はやせていて、その当時から体重が10kg以上増加した方や、痩せていても、特に顎の小さな方でみられるために、太っていないからといっても、注意が必要です。ですので、うるさいからと、音を静かにする治療ではなく、息がとまっているかどうか、そして止まっていたとしたらどれくらい止まっているのかが治療において特に重要な問題点となります。

放っておくとどうなるの?

さて、睡眠中に10秒以上息が止まることを無呼吸、それに準じた状態を低呼吸と呼ぶことになっていますが、その正常値は1時間あたり5回以下とされています。つまり、この無~低呼吸は、1時間あたり5回は普通の人にもあるということです。

そして、この1時間あたりの無~低呼吸発作の回数を「無呼吸低呼吸指数:AHI」と呼びますが、このAHIが20以上あると呼吸の補助器(CPAP、シーパップ)を睡眠中に装着する治療をおこなうという方針が推奨されています。
なぜかというと、この睡眠時無呼吸症候群という病気では、短期的には交通事故など集中力低下から事故を起こしやすくなること(4~7倍)、長期的には動脈硬化による血管系の病気を起こしやすくなることが知られています。特にそのAHIが20よりも高い方は、治療せずにいると、5年後くらいに高くない人と比べて血管がつまるような病気を発症する割合が明らかに高まってきます。

つまり、睡眠が不十分なため不必要な事故を起こしやすくなり、ひいては血管の老化にも例えられる動脈硬化が早く進み、心筋梗塞や脳梗塞を将来起こしやすくなり、結果的には突然死などで寿命が縮むか、死なないまでも重篤な障害で苦労するといったリスクが高まります。

しかも他のメタボ疾患であるところの高血圧や糖尿病などと総合的にマイナスの相互作用を及ぼしやすく、そういったメタボ関連疾患はあればあるだけ余計に血管が破綻するような怖い病気にかかりやすくなります。

また、特にご夫婦で寝室が一緒の場合…いびきがうるさすぎるとベッドパートナーの方の睡眠の質も不十分なものとなり、家族関係にもひびが入りかねません。

こんな症状はありませんか??

  • 疲れやすい、起床時に熟睡感がない・頭が痛い・口がパサパサ、口臭を指摘される
  • 血圧の薬を飲んでも効果がよくない
  • 食後の強い眠気や寝落ち、仕事への集中困難、
  • 運転中に休憩しないと起きていられない…赤信号で寝落ちや、すでに居眠り運転で事故歴がある…
  • 寝たはずなのに寝た気がしない、悪夢を繰り返し見る、夜間尿意で目が覚める
  • 普段から何となくしんどい・疲れやすい、休日はゴロゴロしっぱなし、寝溜めをしないとやってられない、十分時間を取って寝たはずなのに疲れがとれない、なんかしらんけど、しんどい…

これらのエピソードが、睡眠時無呼吸症候群を疑うきっかけです。
ただ、繰り返しますが、大部分(8割くらい)の方は、「無症状」です!
つまり、寝ているときのことなので自分ではわからず、自分で自発的に受診する方よりも、家族の方に「頼むから受診してほしい」と言われて受診に至ったようなケースも多くみられます。まず、知っていないことには疑うことすらできず、非常に見つけにくい病気です。トシのせいと思っていた体力低下が実はこの病気だったということも多々あります。ですので、家族さんにいびきを指摘された方は「好きでいびきかいてるわけじゃない!」などとへそを曲げずに、一度受診だけでもお願いしたいのと、それでも嫌な方は、まず、スマホの動画や「いびき測定アプリ」などで他人にはどのように見えている、聞こえているのかを確認されてみてはいかがでしょうか。

いびきはどうしておきるの??

そもそもいびきは、鼻がうるさく鳴っているように思われる方も多いようですが、音の鳴っている場所ははのどの奥で、舌の付け根になります(焼肉で言う「タン元」の部分)。中年以降にはこの部分に脂肪がつきやすくなり、いわゆるサシが入ったような状態になります。先端部分には筋肉が密集しているため、口を開いて見える部分にはあまりぜい肉はつくことはありません。

この付け根の周辺が狭くなり、のどの奥の息の通り道は段々と狭くなります。この周辺に舌の付け根があたってブルブル震えるとうるさいいびきが発生します。川の狭いところは流れが速くなるのと同様に、のどの奥が狭くなると吸う息が速くなり、柔らかい組織はその息の流れに強く引き込まれます。舌の付け根にぜい肉がついてくると、このような現象がのどの奥にも起こり、いびきが大きくなります。

また、「睡眠薬」「安定剤」などの、筋肉をほぐすような作用を持つお薬や、飲酒の際にも同様に、筋肉の緊張が和らぐため、いびきが大きくなります。

以上のようなことがのどの奥で起きてしまうのがいびきですが、さらに、プールの排水口に手を当てるとぐっと強い力で引き込まれるように、結局完全に蓋になってしまうと息がとまります。
このように、睡眠中に、舌の付け根がのどの奥の息の通り道に吸い込まれ、はまりこんでふたになってしまうことで無呼吸発作は起こります。

⇐牛タン断面図

先端:筋肉質の赤身

舌根(舌の付け根、タン元):は脂身が付きやすい

さすがに息がとまると、苦しさから睡眠が浅くなり息をしようという働きが起きて、また息をしだすのですが、結局もともとのどの奥が狭いためにそれを繰り返し起こして朝を迎えることとなるのがこの病気です。

治療はどうしたらいいの?

10秒以上の無呼吸発作(呼吸停止)が睡眠1時間あたり5回以上あって、上記のような症状を伴うと、「睡眠時無呼吸症候群」という病気です。
軽症例ではマウスピースを使用します。
特に20回以上あるとしっかりした治療、CPAP治療(呼吸の補助器を使う)が必要となります。

※「芸能人 睡眠時無呼吸」で検索すると…比較的細い人でも治療を受けていることがわかります
※いびきそのものを静かにするのが目的ではなく、いびきに隠れている「睡眠時無呼吸症候群」というものが治療の対象です…「いびきだけ静かになればいい」はダメ!なのです
※なぜダメかと言うと、いびきが静かになったとしても、呼吸の停止エピソード、無呼吸発作が解決していないと、体に対する負担は全然かわりません。特に、いびきのことを検索すると「最新のレーザーで根本的に解決!」といった派手なキャッチコピーで保険の効かない自費診療の広告がバンバン表示されるようになりますが、全く治療として意味をなしておらず、いびきだけが静かになったとて体にはよいことが起こらない点について注意が必要です。うるさく震える部分だけを静かにするようにしても、閉塞をきたしている部分を放置していては、睡眠不足の負担を減らす・将来の血管病変を予防する治療としての意味は全くありません。そんなでたらめな治療のために高額の治療費を払うことは、はっきり言って無駄でしかありません。

検査について

無呼吸の検査の実際をお示しいたします。

まずは第一段階として簡易検査、そして第二段階として精密検査と、この2つを経て、しっかりと「閉塞性」=のどが狭いタイプからくる睡眠時無呼吸症候群ということが証明されないと治療を受けることができません。そして簡易検査は当院でも可能ですが、精密検査は入院検査となりますので、病院を紹介させて頂きます。

簡易検査

まず、「簡易検査」といって、パルスオキシメーターという機械があります。いわゆる、「酸素飽和度」=体の中にどれだけ酸素が含まれているのかを評価する機械を、夜中、寝ている間着用します。もし、寝ている間に息が止まっていれば、酸素飽和度は度々低下します。また、同時に脈拍も測定しており、呼吸をしたくても、舌の付け根が蓋になっていれば、体に十分な酸素が供給されないため、体に負担がかかり、寝ていても苦しくて脈拍が上昇します。同時に口鼻の呼吸のモニターも行います(機械によってはないタイプもあります)。

そして、その結果、AHI(もしくはODI3%:1時間あたり酸素飽和度が3以上さがる回数)が5回以上もしくはそれに準じる形で、酸素飽和度と脈拍がよく上がったり下がったりでグラフがギザギザしているぞ…というような方に、次は終夜睡眠ポリソムノグラフィーという検査を受けて頂くことになります(そもそも、酸素飽和度の低下がなければ、ギザギザとしたグラフになることはありません)。
本来この数値は5以下であってほしいのですが、うるさいいびきをかいている人で家族さんにしょっちゅう止まっていると指摘を受けておられるのであれば、大体、5以上のことが多く、多くの方に一泊入院の精密検査をお勧めすることになります。

精密検査

そして、次に行う精密検査ですが、一泊入院を必要とします。正式名称を「終夜睡眠ポリソムノグラフィー検査」とか、「PSG検査」ともいいます。これを行うにあたっては、簡易検査をしていることが保険のルールでは必要となり、最初から簡易検査を受けることなく終夜睡眠ポリソムノグラフィーを受けるといったことはできないことになっています。

終夜睡眠ポリソムノグラフィーは、病院で一泊入院の検査となります。簡易検査のような項目に加え、胸の運動や脳波も同時に測定することとなり、たくさんのセンサー類を体に装着します。というのは、この病気には大きく2つタイプがあり、大多数の場合は気道の狭さが原因のケースである「閉塞性」と、少数の「いびきはさほどかいていないのに脳・神経・心臓に原因があって息がとまる」というような「中枢性」のタイプがあります。
この区別は大体、胸の動きと酸素飽和度の低下の規則性で判定ができます。規則正しく、胸の動きと連動して息が止まっていれば閉塞性(のどの奥がせまいタイプ)、特に規則性がない形で止まるのなら少数の中枢性という判断となります。
閉塞性であれば、CPAPもしくはマウスピースでの治療となりますが、中枢性であった場合にこれらの治療方法では、治療の効果がなく、そのため、この2つのタイプにはきっちりとした鑑別が必要であり、この検査が必要とされています。もしも中枢性であった場合、脳や神経、心臓に原因を求める必要があり、こういった臓器そのものへのさらなる検査、治療が必要となります。
つまり、睡眠時無呼吸症候群の大多数のタイプである「閉塞性」という診断と、AHIが5以上=一時間あたり10秒以上息が止まるイベントが5回以上あるということがはっきりして初めて保険適応の治療を受ける方向に進むことができます。

治療について

軽症例の治療…マウスピース

AHIが5以上であれば比較的軽症ということで、マウスピースを歯科の先生に依頼してお作りいただきます。20以上の方となると、マウスピースでは追いつかず、CPAPと呼ばれる呼吸の補助器をつけて頂くことになります。
普通のマウスピースは、いわゆる、歯を守るような、歯軋りの摩擦を軽減するような形のものが多いと思われますが、この、睡眠時無呼吸症候群の軽症の方には、マウスピースでも、下顎を前に出してそのまま固定する形となります。というのは、下顎を前にずらして、いわゆる関西弁の「しゃくれ」させるような形を取ってもらうように固定するマウスピースで、そうすることによって、下顎が前にずらされれば、その後ろにある息の通り道は広がり、いびきの軽減と、無呼吸発作の軽減が図れるような装具です。

AHI>20の場合、呼吸の補助器…CPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸療法)

マウスピースによる効果がおいつかないような中等症から重症の方に適応があります。
いわゆる、のどの奥が相当せまく、しかも息を吸い込む際にのどがその吸い込む行きの引力にまけてへしゃげてしまうような形で息が止まってしまうような状態が睡眠中に起きているため、鼻を経由して、狭いのどを広げるような強い圧力をかけて空気を送り込む、呼吸の補助器のことです。つまり、これでへしゃげたのどの奥へ強く空気を送り込むことによってしっかり寝ている間も息をしてもらい、睡眠の質を上げていくようにします。

この2つの方法は、ともに「対症療法」と言うものになります。つまり、つけている時は改善が期待できても、外してしまえば元通りというわけです。
更に言うと、つけているからと言って、のどの奥がだんだん広がっていって、次第につけなくてもよいようになるというものではありません。
基本的には、よほど劇的な減量に成功しないといけないか、さらには顎を広げるようなかなりの負担がかかる手術を受けない限りはほぼ一生し続けないといけないという性格のものです。かけているうちに視力が改善するメガネや、つけているうちに聞こえが改善する補聴器がないのとほぼ同様にお考えください。そして理想的には、可能であれば、CPAPを睡眠中に装着し、減量にとりくみ、減量でうまくいった暁にはCPAPでを卒業するということができたらよいのですが、そこまでの減量は実際にはかなり難易度が高いことになります。正直なところ、骨格の問題が影響しているため、理想体重もしくは20歳頃の体重に戻れば現実味が出てくるのですが…そもそも肥満の方が理想体重まで減量することについては難易度が高いことですし、さらにはさほど太っていない方の場合であれば、顎の骨格の小ささが強い因子として働いている場合が多く、減量してもなかなか改善には繋がりません。厳しい現実ですが、これが「一生物」という理由です。

CPAPの問題点

CPAPという、呼吸の補助器は、鼻を経由して圧力がかかった空気を送り込むため、まず鼻の通りがきちんとできることが大前提となります。「鼻に空気が飛び込んでくる」といった表現をされる方もときにおられます。そのため、鼻呼吸をするのが辛いようなアレルギー性鼻炎の方はしっかりとした治療をお受け頂く必要があります。鼻中隔の弯曲が強くもともと強いような鼻がつまり気味の方で、苦しくてつけて寝られない、すなわち治療効果が得られないような方には手術をご提案することもあります。
さらに、CPAPは慣れるまでに相当な時間を要する方も中にはおられます。Webサイトによっては「CPAPで人生が変わる!」と書いてあるのをときにみかけますし、そういってくださるような方は確かに存在するのですが、残念ながら少数の方にとどまります。実際、大半の治療を受けだした方は「すんなり起きられるようになった」「血圧がさがった」「日中の眠気が改善した」というふうに好意的には言ってくださいますが、特にもともと自覚症状がなかった方は、治療を初めても、「以前と大して変わらない」とお話になる方も多くおられます。こういった方におけるモチベーションの維持ということも難しい問題点ではあるのですが、そもそも、翌日すっきり起きられるようになることが目標ではなく、5年先、10年先に元気でいることが目標となります。
この病気は2,3kg程度のダイエットで簡単に治ってくれるようなやさしいものではなく、特に肥満の強い方や、運転のお仕事などの方についてはより治療の介入が必要と考えます。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME