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くびのしこりの性質

首のグリグリ・しこりが気になる!

首のリンパ節が外から腫れていて、気になるということで受診される方が多くいらっしゃいます。
そういった首のリンパ節が腫れるような病気はたくさんあるのですが、まずは皆さん「怖いデキモノではないか」ということが一番の心配ごとと思います。
首のリンパ節が腫れるような病気は、まずは炎症と、腫瘍に分かれます。この鑑別には、痛みの有無が大切になってきます。もし痛みがあれば、大半は炎症性の可能性が高く、経過をみていくことになります(とはいえ、軽度の炎症の場合では、あまり痛くないこともあります)。

炎症の場合のいろいろ

まずは普通に炎症が多く、結局はカゼに伴うことが圧倒的に多いと思われます。わたしたちの体はいつも常に異物を外へ追い払う活動をしていますが、それが免疫反応というものです。そしてその免疫反応の中心基地が、リンパ節となります。一番異物が入ってくる口、のどの周りには多数の首のリンパ節が備わっており、概ね片方7~80個ずつあると考えられています。またリンパ節は互いにネットワークを持っており、「リンパ流」と呼ばれるような流れがあります。例えば、やや外側、やや後ろ側のリンパ節が腫れている場合は、鼻の一番奥の「上咽頭」と呼ばれるエリアに炎症がある場合が多いです。

そういったように、口からのどの奥にかけてひとたび炎症が起これば、それに伴ってリンパ節が反応して腫れることが多く見られます。のどが異物にとっての一番の入口であるため、異物の排除、すなわち免疫の反応が常に我々の体の中で起きています。そしてその免疫の反応に伴ってのどの奥でバイキンをやっつける活動=炎症が起きると、それに伴い免疫反応に関わる細胞の基地として周囲のリンパ節が活発に頑張るので、のどの炎症では首のリンパ節が腫れることが多く見られます。

さほどのどの炎症が強くない場合でも、エコーを当てれば首のリンパ節が腫れている姿が見られるといったこともよくあります。(強く腫れないとエコーを当てることもないため、カゼを引いたときなどに首のリンパ節が地味に腫れていることはあまり知られていません。)こういった場合は、しばらく鎮痛剤などで経過をみてもらうことになります。

ちなみに、エコーを当てた場合、リンパ節は炎症由来の場合は平べったく、腫瘍由来であれば強く丸く腫れることが知られており、そういった外観の形でもおよその見当をつけることができます。

また、穿刺吸引細胞診と言って、エコーで見ながら注射器につなげた針でリンパ節をついて、中に含まれる細胞を吸い出して、顕微鏡の検査に出してどういった細胞が含まれているのかを確認する検査も行われることがあります。こちらは当院では行っておりませんので、強い炎症や、症状が強い場合、腫瘍を疑った場合に高次医療機関にお願いすることになります。

炎症で首が腫れる場合、少し有名なもの

亜急性壊死性リンパ節炎(別名:菊池病)

若い女性に多い傾向があります。高熱が続き、頚部リンパ節が複数個腫れます。いわゆる、鎮痛剤を飲んでしばらく耐える対症療法しかなく、ケースにもよりますが、約数か月程度高熱と頚部のリンパ節腫脹が見られることがあります。個人的には、一月程度続く方が多かった印象です。採血や穿刺吸引細胞診である程度診断がつく場合があります。

川崎病

とくに小さなお子様の場合で、高熱が続き、首を動かすのも嫌がるような、首を斜めにしたまま動かしにくそうな素振りをしているといったことで耳鼻科に受診されることがあります。エコーを当てると複数個腫れたリンパ節が見えます。頚部リンパ節炎として対症療法や抗菌薬で経過を見ているうちに、最初は高熱と首のリンパ節の腫れ程度だった所見が、段々と特徴的なものが増えていき診断に至るということがあります。舌のイチゴのような真っ赤な腫れ方や、二の腕のBCGを打ったあとが腫れる、手の皮がさけるようにむける…などの所見が揃うと、川崎病と診断されます。この場合、生検など、過剰な検査にならぬよう気をつける必要があります。

腫瘍には何があるの…

また、首のしこりで腫瘍ということであれば、近隣の、特に口からのどにかけてのガンが飛んできた…ということか、血液のガンと便宜的に言われる悪性リンパ腫の可能性を主に考えます。

まず、口腔がんや咽頭がんの場合、特にお酒・タバコを長年しっかりと摂取してきた方に明らかに多い傾向があります。高齢者で、しかも飲酒喫煙歴がはっきりとある方の場合、注意してのど・首を診察する必要があります。

そして、甲状腺がんでも首のリンパ節に飛ぶことはありますが、甲状腺の場合は他の頚部のがんよりもだいぶおとなしいことが多く、大半は寿命を縮めるほどではないことが多いです。

また、悪性リンパ腫も首のリンパ節が腫れるだけではなく、いわゆる時間経過とともにだんだんと腫れたリンパ節が増えてくる、微熱が続く、汗をかきやすくなるという特徴も伴っており、診断には注意が必要です。

ただ、実は、悪性リンパ腫のほうがまだ治療としては口腔・咽頭・喉頭がんより与し易い傾向があります。というのは、これら頚部のがんで、リンパ節に飛んでいるということであればすでにそれは早期ではなく進行がんの特徴でもあり、ステージとしては数字が大きい方となります。要するにすでに病気としてしっかり広がっていることとなります。また、もしそうとなれば手術単独ではなく、無事に手術が終わったあとに、化学療法や放射線療法を組み合わせて治療を行う必要があり、治療に伴う体の負担も大きいということです。また、手術を行うにしても、首周りのがんであれば機能低下を伴うことが多く、嚥下や咀嚼の機能が無傷というわけにはいきません。

一方これに対して、悪性リンパ腫であれば、また厳密には悪性度によって治療法は変わりますが、概ね手術は検査目的の手術のことが多く、組織の診断を行うためにリンパ節の一部をかじるような形となり、この手術にともなう機能低下はあまり考える必要もないと思います。実際、悪性リンパ腫の診断がくだれば、化学療法で治療していくことが多いです。悪性度にあわせ、色々とタイプがあり、週単位で進む高悪性から年単位でみていく低悪性までおよそ70程度のタイプがあり、当然高悪性の場合は非常に難しい病気にはなるのですが、それでも、口腔・咽頭がんといった病気のほうが体の機能に与える影響が大きいと考えます。

舌がんなどであれば、舌の一部を切り取るわけなので、味覚や、嚥下、発音、構音構語の機能が落ちると思われます。大きければ大きいほど大変な機能低下に見舞われ、例えば、腹直筋など他の組織の筋肉を切り取ってきて移植するなどの必要性が生じます。
もちろん、昨今は治療の研究も進み、体に負担の少ない治療法、手術が日々開発されていますが、それでも基本的にはかからないことが一番ですし、そのためには「禁煙、節酒」が望ましいと考えます…。

そしてしつこいですが、甲状腺がんであれば、そこまでひどいことになることは少ないです。またこれは他の項目で説明をいたします。

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