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アレルギー性鼻炎・花粉症

アレルギー性鼻炎 基本編

アレルギー性鼻炎って何でしょうか?

ヒトには、異物が体内へ入ると、それを排除しようとする力があります。これが必要以上に現れ、何らかの原因で過剰に活性化して症状が出るものがアレルギーと呼ばれています。このアレルギー反応が鼻の粘膜で起こると、くしゃみや鼻水などの症状が現れます。
つまり、異物が体内に入って来つつあるとき、異物を押し出すためにくしゃみを出して強い風で押し返す、鼻水を出して洗い流す、粘膜を腫れさせてそれ以上入ってこないように通せんぼする、という排除の反応がありますが、異物が草木の花粉やほこりの場合で、その反応が過剰に強く現れ、ご本人にとって不快な症状として現れる状況のことをさしていいます。

特に原因が花粉の場合、「花粉症」と呼びます。主に原因となるものは、1月後半から5月前半まで飛ぶスギ、ヒノキです。ここ最近は夏や秋でも花粉症でお悩みの方が増加しています。初夏から夏にかけてはカモガヤ、夏から秋にかけてブタクサ、秋はイネやヨモギが原因となる場合もあります。ホコリやダニが原因の場合は一年を通して症状が現れます。

代表的な辛い症状として、くしゃみ・鼻水・鼻づまり、目のかゆみですが、それだけでなく、のどのかゆみ、せき、皮膚のかゆみも伴うことがあります。また、頭痛、倦怠感、お腹の痛みや下痢といった症状まで出る場合もあります。
原因になる花粉などの物質はさまざまで、人によりその種類も違いますが、原因は症状の出る時期でおおよそ区別がつきます。
採血により調べることもできますが、費用は三割負担の方で約5000円程度追加になります。特に後に説明する、舌下免疫療法をご希望の方はご相談ください(アレルギーが軽い場合や、発症直後では陰性と出てしまう可能性もあります)。

治療について

ざっくりとした説明になりますが、アレルギー性鼻炎は①「くしゃみ・鼻水型」、②「鼻閉(鼻づまり)型」、③「その両方型」に分類されます。

①くしゃみ・鼻水型

①の「くしゃみ・鼻水型」によく用いられるものは「抗ヒスタミン剤」と呼ばれるタイプのお薬です。抗ヒスタミン剤は、効果が強いものは基本的に眠気も同時に伴う傾向がありますので、まずは車の運転をされる方は医師にお知らせください。ちなみに抗ヒスタミン剤は、運転OK、運転注意、運転禁止と3つのランクにわかれています。また、初診の方は眠気の少ないものをお試しも兼ねて数日分より処方します(もし最初から長期処方していると効果が今ひとつであったり、眠気が強く出たりするようなことがあれば、その分無駄で患者さんご自身の負担になりかねず、初回からの長期処方は行っておりません)。

②鼻閉(鼻づまり)型

②の方には「ロイコトリエン受容体拮抗薬」と呼ばれるタイプのお薬を中心に処方しています。喘息の患者さんにもよく用いられるお薬です。

③その両方型

そして③の方には、両方を処方します。また、点鼻ステロイド薬というものがあり、①にも②にも効果的であり、眠気もないため、こちらも上乗せ効果を狙いよく処方しています。また、ステロイドではあっても、鼻の粘膜だけに効果を発揮し、全身の他の臓器への悪影響が少なく小児・妊婦さんにも強い悪影響が少ないことでも知られています。

このように、当院ではガイドラインにもとづいて、患者さんご本人と相談しながら効果的であろうと期待ができるお薬をご提案していますが、結局は患者さんご自身とアレルギー症状を抑えるお薬との相性が大切であると考えていますので、「ご自身と合うお薬を探していく」という形で、ご自身の効果の感覚を、時間経過も含めて判断して、治療を進めていく形を大切にしております。

初期治療という言葉があります!

花粉が飛び出してから我慢を重ねて「もう無理だ!」となってから来院されるよりは、花粉の飛び出す時期より少し前から治療を開始されると、よりしっかりと薬の効果が期待できます。この治療法を「初期治療」と呼びます。特に、スギ・ヒノキに対する反応を強くお持ちの方は、本格的な花粉が飛散し始める時期よりも早く、1月後半くらいから服薬を開始するなどして頂くと、花粉の本格的な飛散時期に辛い思いをする必要なくお過ごし頂けるものと考えます。

特に、本格的な飛散期になってから服薬を開始しても、抗ヒスタミン剤などは効果のピークに至るまで数日程度必要とするため、「飲んでいても薬が全然効いてくれない」というような誤った感覚を持ってしまうこともあり得ます。ですので、毎年その時期に強く症状が出るといった方は、少し余裕を持って受診いただき、症状が強く出る前からそれに備えて服薬をしていただくということが大切と考えています。

また、花粉症治療において同時にとても大切なことは、原因となっている花粉を避けること(抗原回避)で、外出時にメガネやマスクをする、洗濯物を外で干さない、家に入る時は上着をはらう、といったことに注意し、ダニやホコリが原因の場合はこまめに掃除をする、掃除するときもマスクをする、ぬいぐるみを減らすなどの対策が必要となります。
それでも症状が強い場合はやはりお薬が必要となりますが、お薬はあくまで対症療法であり、アレルギー体質が治るような、根本的な治療ではありません。飲み続けても特に大きな問題がなければ、基本的に飲み続けるという選択となります。

いつまで薬を使用すべき?

スギだけの方なら4月上旬ヒノキも反応がある方は5月上旬、連休くらいまでが適切と考えます。またカモガヤでは梅雨に入るまでくらい、とお考えいただくとよいのではないでしょうか。通年性、つまり一年中のタイプであれば、やはり毎日使い続けるべきと考えています。あまりお薬をずっと飲みたくないというような方には、後に述べる手術や舌下免疫療法をお勧めしています

アレルギー性鼻炎 してはいけない治療

市販点鼻薬には注意を!

OTCと言って、一般的なドラッグストアに行くと、たくさんの花粉症対策薬剤が売られています。その中には、「使うとすぐに鼻が通る薬」つまり、「ナザールスプレー」や「パブロン鼻炎スプレー」などの、「ナファゾリン塩酸塩」と呼ばれる成分を含む点鼻薬には注意を要します。というのは、この成分は血管収縮薬であり、長期にわたり頻回に連用していると逆に鼻づまりが悪化するような不具合を生じることがあるからです。

この成分はもともとすばやく血管を収縮させる働きをもっています。鼻に使用すると、粘膜の中の血管を縮めるため、鼻の内部のひだ全体を収縮させることができます。つまり、今まで空気の通り道を通せんぼしていた腫れていた部分が縮み、結果として鼻の内部に空気が通りやすくなり、鼻呼吸が楽になります。鼻にシュッと噴射すると、5~10分程度すると鼻がスースーと呼吸しやすくなるという、即効性のあるお薬です。

しかしこれをあまり頻繁に使用していると、常に鼻づまりがない、スースーと鼻が通っているような容易に鼻呼吸ができる状態でないと満足できない、それどころか落ち着かなくなって何度も使用してしまうといったような「依存」という現象までおきたりします。

また「薬剤性鼻炎」といって、このお薬を頻繁に使用し続けていると、薬の感受性が下がって、効果がだんだんと乏しくなるという特徴があります。薬を使用していないと鼻の粘膜がもともとの状態よりも膨れてしまってそのままとなり、その点鼻薬を使い続けないと鼻づまりが悪化し口呼吸しかできなくなる、点鼻薬の効果が切れるたびにもともとの状態よりもひどい鼻詰まりを起こしてしまうので、使い続ける以外やりようがなくなる…というような症状をきたす場合があります。要するにしょっちゅう使い続けていると逆に鼻づまりがひどくなってしまいかねない、というような特徴があるお薬です。

使用者全員がそうなるわけではありません。しかし、こういった場合は最悪の場合、何度使っても少ししか効果が持たないとなって、結局手術以外に改善の方法がない、ということになりかねません。ですので、手元にないと不安になる、使っていないと仕事に集中ができない…というような状態の方には、効果が薄れるということのない点鼻ステロイド剤を使用し、粘膜のむくみ・腫れを取りながら市販点鼻薬の使用頻度をだんだんと減らすという方法が望ましいと考えています。点鼻ステロイド剤には即効性はなく、効果の発現には数日から数週間かかりますが、鼻の粘膜のむくみをとってくれる働きがあります。

そういうことを踏まえ、薬剤性鼻炎となっている、普段からもはや血管収縮薬がないとやっていけないような方に対しては、次のように指導しております。

まず、普段通り血管収縮薬含有点鼻スプレーを使用して頂きます。

約5~10分程度経過して、いつものように、ある程度鼻呼吸が改善されて鼻がスースーと鼻呼吸がしやすくなった状態を確認してもらい、そして、それから点鼻ステロイドを使用していただくようにお伝えしています。

というのは、鼻の粘膜が強く腫れている状態で点鼻ステロイドを使用しても、入口で通せんぼされてしまって届けて行きたい鼻の奥にはお薬が届かず、全体的な効果の発現に余計な時間がかかるからです。鼻づまりが改善されていれば、鼻腔全体に点鼻ステロイド剤の有効的な薬剤成分が最初から奥にも届いてくれるので、素早く効果を発現し、ひいては血管収縮薬の使用がいらなくなってくるものと考えています。そして鼻の粘膜のむくみが落ち着けば、できれば、点鼻ステロイド剤自体も卒業が期待できるのではないかと思います。

ということで、もしも、そのようなお薬を普段からお使いの場合は薬剤の選択に影響を及ぼしますので、事前に医師にお伝えくださると幸いです。

「一回で楽になる注射」やってないの?

昔、花粉症に、一回打ったらそれだけでワンシーズン楽にすごせるステロイドの注射がもてはやされていた時代がありました。結論から言えば、今では必要なくなったと考えます。花粉症が治るという言い方をしていた医者もいたそうですが、今や推奨されるものではありません。これだけ効果のある新しいお薬が出てきた時代には、もはや必要がないと言ってよいと思っています。ステロイドというお薬は、炎症を抑える力が強く、特にアレルギー性鼻炎の症状については、大幅に抑えられ快適に過ごせるくらいに症状を楽にすることができますが、このあとに記載するような副作用が出る可能性もあり、アレルギー性鼻炎という病気に対して使用することははっきり言って見合わないため、お勧めができません(もちろん、膠原病など、疾患によっては使用し続けないといけないものもあります)。最悪使用するとしても、個人的には重症の方の、人生を左右するような大事なイベント(就職試験や結婚式など)に限って、といったところでしょう。

ステロイドとは…体の中で元気をつかさどる化学物質

もともとステロイドは、私達の体の中、腎臓の近くの「副腎」というところから分泌されているホルモンです。色々な組織において、エネルギーの代謝や、多種多様な化学反応に大変重要な役割を果たしています。特に、糖分・エネルギーの生産、炎症の抑制など、ストレスを抑え込んで体を元気にする作用があり、正しい方法で付き合えば大変有効な薬剤です。

ですが、もともと体の様々な部分に影響を与える性質のある薬であるため、全身に作用する使い方では注意が必要となります。特に、糖尿病、高血圧、B型肝炎、胃潰瘍、緑内障、白内障、結核の既往のある場合は相性が悪く、注意が必要となります。

耳鼻科では炎症を抑える効果を期待して使用することが多く、期間を限定し少量で副作用に注意しながら使用します。強いのどの炎症などで、食事がとれないような方に炎症を鎮める目的で、数日限定的に使用することがあります。

特に、アレルギー分野であれば、点鼻ステロイドは非常に有効な薬剤です。鼻の粘膜だけに作用し、全身への影響はほぼないとされています。また、当院でもたくさんの方にお使い頂いております。

つまり、ステロイドも量と種類、投与期間、目標を明らかにして適切に選択し使用すれば、怖い副作用はめったに起きないと言ってよいと思います。

例として、お薬として内服したり、長期間外部から補充されている状態が続くと、脳が「体内のステロイドの量は充分だ」と勘違いし、副腎からの分泌を減らすよう命令します。

そのまま長期経過した状態で、突然内服をやめると、脳から副腎へステロイドの増産が命令されますが、今まで休んでいた副腎は、突然ステロイドの分泌量を増やすことができません。

結果として体内では必要なステロイドの量が供給できず、欠乏してしまいます。ここで「リバウンド」と呼ばれる現象が起きます。今までステロイドで抑えていた症状が抑えられなくなり、もともとよりも強く悪化して現れる現象です。

膠原病など、疾患の性質から本来は長期に内服を継続しないといけないのに、突如やめてしまうと、症状が以前よりさらに悪化して現れる場合があります。これがその昔アトピー性皮膚炎でテレビに取り上げられ、非常に問題視され、怖いイメージだけが残ったようです。

耳鼻科では、強い炎症や浮腫、突発性難聴をはじめとする急性の感音難聴に、短期間に限定して少しずつ減らして行く飲み方で使用します。特に長期間使い続けていて突然やめてしまうような使用法は当院ではまず行いません。

話はもどって、その「花粉症が一回で改善するステロイドの注射」ですが、現状日本アレルギー学会から花粉症の治療としては推奨されておらず、ガイドラインにも記載はありません。また、そういった治療をお受けの方はご注意頂く必要があります。特にご本人にそのお薬がステロイドであると言う説明が全然なされていないことも多くあるようです。

商品名は「ケナコルト」というもので、半減期が長い、つまり体の中で分解されるのに時間がかかるタイプのステロイドです。長期間効果があるというようなことは、確かに一度で効果が持続するということではあるのですが、裏返せばもし副作用が出た場合、副作用そのものも長期間出っぱなしということになります。つまり、それを注射すると、そのおかげでスギ・ヒノキの花粉シーズン中の2、3ヶ月は楽にすごせるようになるのですが…もし副作用が出た場合、副作用も2、3ヶ月出続けて、コントロールすることはできません。結果として、体の中で分解されるまで、副作用が出続けることとなります。

もともとステロイドには体を元気にする作用がありますが、それが効きすぎるとまず興奮(カッカするようなほてり感)・不眠症・怒りやすくなるなどの精神的影響、短期的には高血糖・高血圧・緑内障発作のリスク上昇・ステロイドざ瘡(にきび)・月経不順などがあります。また長期的には満月様顔貌(顔が大きくなる)・中心性肥満(体幹が太る)・多毛・免疫能低下・注射部位の筋萎縮や変形などがあります。そして、繰り返し使用すると、将来の糖尿病発症リスク上昇・骨密度低下から骨粗鬆症・白内障/緑内障発症リスク上昇・副腎機能不全…などがあります。

こういった安全性の観点から安易に行ってはならないと考えます。また恐ろしいのが、保険の効かない美容クリニックなど、自費診療の形でずさんな説明しないのに高額で使用している医師がいるということです。

他に良い薬がなかったため、ハイリスクでも使用せざるを得なかった時代に仕方なく生み出された治療法としてステロイドの筋肉注射ですが、今は他に安全に使用できる薬剤が発売されており、あえて選択する必要性は乏しいと考えます。

すでに「昭和の治療」とでも言うべき扱いになっており、よほどの理由がない限り選択されなくなっていくものではないでしょうか。

そして、その昭和の治療に対して、現在は遺伝子工学の粋を集めた、新しい注射の治療が出てきました。薬剤としては効果的、安全で、当院では行っておりませんが、一度こちらhttps://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/pollinosisをご覧頂くとよいと思います。

何で最近セレスタミンを昔みたいに出してくれないの??

⇒不必要だからです!

効果が強い「セレスタミン」は症状が非常に強い場合に使用することがありますが、ほとんど処方しないか、したとしても短期間だけにとどめています。そもそもセレスタミンはステロイド製剤であり、長期連用で誘発される副作用があるため、基本的には長期間の継続使用は避けるべきで、本当に症状が強いときに限定的に使用すべき薬剤と考えています。

また、セレスタミンは、ステロイドと、古いタイプの抗ヒスタミン剤の合剤です。ステロイドではない部分の古い抗ヒスタミン剤では、眠気も強く出る場合があり、自動車の運転をする方には処方ができません。また、前立腺肥大や緑内障、糖尿病の方とは相性が悪いため使用できません。特に、眠気が強く、お子様には向かないと考えています。

その昔は効果的でよく使用されていたお薬ですが、上記の性質のため、使用する必要性が少なくなってきていると考えられます。特に、眠気の少なく効果の高いお薬が多数開発されてきた今日、このお薬を積極的に選択すべき理由も減ってきているものと考えます。

アレルギー性鼻炎 手術と舌下免疫

鼻にも手術ってするものですか?

⇒耳鼻科は手術を行う科です!

例えばハウスダストやホコリなどが原因の、年間を通じて症状が強い方や、薬では症状のコントロールがおいつかないような非常に強い症状でお悩みであれば手術を選択肢としてご提示しています。

手術もピンキリ、すなわちピンからキリまであります。局所麻酔で数十分程度で済ませられるレーザー手術から、入院を伴う全身麻酔でしっかり治療を行うものまであります。

レーザー手術…比較的負担の少ない手術

「下鼻甲介(かびこうかい)」と呼ばれる、鼻の温度調節や鼻水の分泌を司っている部分があります。こちらの粘膜の浅い範囲にレーザーを照射し、わざと「やけど」させることにより、「ひきつれ」に置き換える~変性させるような操作を行います。「ひきつれ」の場所は正式の表現では「瘢痕(はんこん)」といいます。もともとは鼻水を出すような働きの組織があるところが、あまりにたくさん鼻水を出しすぎるため患者さんにとっては迷惑となっているわけですので、その働きをおさえるために人為的にやけどをさせるわけです。こちらをやけどさせたうえに、「ひきつれ」に置き換えます。その、「ひきつれ」へと置き換わった組織では、十分に鼻水の分泌を行うことができません。また、ひきつれた組織は、元の粘膜よりも少し縮んできます。結果的にご本人にとっては鼻水が少なくなり、鼻通りもよくなる・鼻詰まりが改善する…ということとなります。

ただし、「やけど」を起こしたそのあとのおよそ10日前後は強く腫れ、大きなかさぶたがついたりするため、スギ・ヒノキ花粉でお悩みの方に対して花粉の飛散期の直前に行うことはお勧めできません。基本的には局所麻酔で、中学生くらいからであれば可能です。ご希望の方には然るべき施設を紹介させて頂きます。

注意点としては、浅い層の変性にとどまるため、体の組織を治そうという力が働くと、もとの粘膜の性質が復活してまた鼻水の分泌能が復活してしまうことがあるということです。ある程度持ってくれればよいのですが、人によっては1シーズンしか持たないということもあり、効果が限定的に感じられることもあります。

鼻の中の構造をかえる手術もあります

鼻中隔という、鼻を左右に分けている真ん中の「ついたて」の構造があります。鼻中隔にはどなたでもたいていゆがみ・たわみがあります。大半の人間ではあまり気にならない程度で済んでいますが、これが原因となって強い鼻詰まりをおこしているような方や、また、そのために鼻風邪をひくたび強い頭痛をはじめとした不快な症状を伴う急性副鼻腔炎を繰り返してきたような方など、それによって悪影響を及ぼしている場合「鼻中隔弯曲症」という病気として扱い、治療の対象とします。また、重症の睡眠時無呼吸症候群をお持ちで、鼻の状態が悪いためにCPAP(シーパップ、呼吸の補助器)をつけていられないといった方にも行われます。

そしてそのゆがみを取る手術は「鼻中隔矯正術」といいます。鼻の真ん中を隔てている壁、ついたての役割をしている鼻中隔という構造は、いわゆる粘膜-軟骨-粘膜という構造をとっています。そこで手術では、こちらの構造をまるで「三枚下ろし」のようにスライスし、曲がりを形成している軟骨に割をいれたり、尖ってる部分を取ってしまったりと鼻のゆがみを補正し、鼻呼吸をしやすくするようにします。

そして、もともと狭かった側は広くなりますが、逆に広かった側は狭くなるため、これもアンバランスにならないように、処理を行います。

また、強い鼻づまりや多量の鼻水がずっと続いているような方には、鼻の奥から走行している、下鼻甲介という粘膜のひだに対して鼻水を出せという命令を送る神経を粘膜をめくって見つけ、これを焼き、働きをつぶしてしまうような手術があります。理論上、しっかり焼く操作を加えることができれば、かなりの改善・半永久的な効果の持続が期待できます。また、その後、鼻の粘膜自体が軽度萎縮してくれるので、もともと強い鼻づまりで難渋していたような方にはかなりの助けとなると考えます。

リスクとしては、うまくいくと逆に将来お年を召して来たときに、鼻水の分泌が足りなくて乾燥した感覚が出るなどのことがあるかもしれません。(ただ、今現在すでにずっと鼻水が多すぎて困っていた方にとっては、その心配はいささか杞憂ではないかと考えます。もし本当にそれが起こった場合は、ワセリンなどをたびたび塗って頂くことになると思います)

手術については、別の記事にも記載しておりますし、またさらに細かな説明をご希望の場合は、医師に診察の際に直接おたずねください。

唯一の根本的な治療法、「舌下免疫療法」

アレルゲンと呼ばれる、アレルギーの原因となる物質を抽出したものを、少量ずつベロの下や口の中の粘膜から長期間かけて体内に吸収させることで体に慣れさせ、アレルギー体質の改善を目指す治療です。以前は繰り返し注射を行う方法をとっていましたが、近年、舌下錠の販売が開始され、痛みの負担が大幅に軽減されています。

現在はスギとダニのアレルギーに対してのみであり、採血にて、しっかりとスギもしくはダニに対して反応があると確認されている方が対象となります。

理論上、根本的な体質改善が期待できる唯一の治療法であり、終了してからも長期にわたって症状を抑えたり、和らげたりすることが期待されています。

ただ、20%の方は治癒、60%の方が症状の改善が認められるものの、それ以外の20%の方には効果が見られませんというような報告があります。

また治療には長期間を必要とし、約3~5年かかります(最低3年、推奨5年)。つまり、即効性はないため、今までの服薬はある程度並行して続ける必要があり、すぐに効いてすぐに治るというわけではありません。

またお薬の基本的な性質から、ごくわずかながら初回・導入早期に喘息発作のような強い反応やアナフィラキシーショックを伴う場合があるため、導入時には所見を改善してからがよいのではないかと個人的に考えております。つまり、安全を期すため、鼻がズルズル、くしゃみ連発といった方にはまず普通に標準的な治療を行い、鼻腔の所見が安定してからが適切ではないかと個人的には考えます。また、もともと喘息をお持ちの方やアトピー性皮膚炎の強い方など、アレルギーとしての活動性の高い方の導入の場合については高次医療機関への紹介をさせて頂いております。

ちなみに、理論としてはそのような危険性を伴うようなことは言われていても、基本的には非常に安全で、そのような強い喘息発作を来したり、アナフィラキシーショックのような重篤な病態を引き起こしたりという報告は非常に少なく、安全性の高い治療法として医療従事者には認識されております。

ちなみに、重症の方に行うような鼻の手術は、ある程度骨格が固まってくる18歳以降が望ましいとされております。つまり、重症のアレルギーであっても高校を卒業するまでは基本的に手術を考えることはあまりないということです。

そういう背景を考えると、常に鼻をすすっているのが日常になっている、口呼吸でずっとしんどそうな顔をしている・鼻づまりがずっと普通にあるため食事の際に口を閉じてものを噛むことができない…といったような、アレルギーで非常に苦労されているような小中学生のお子さんの場合には非常に適した治療ではないかと考えています。

特に、生活のリズムがある程度確立されている、小学生から高校生くらいの間が、一番適切ではないかというお話もあります。

当院では、特に若い方には積極的に舌下免疫療法や手術療法のお話をして、治療の選択肢があるということをお話するようにしています。というのは、症状がもし自然に改善してくるというようなことは重症のアレルギー性鼻炎をお持ちの方にはなかなか起き得ないと考えられており、あったとしても高齢者となって自然の免疫能が落ちてきてから、という側面があります。若い方がそんな高齢者になるまで待つというのは明らかに損失が大きく、また、一度学校を出て働き出すと、ガンのような重篤な病気以外で手術・入院のために休むといったようなことはかなりハードルが高いからです。特に妊娠、授乳の可能性が高い女性では、安全とお伝えしてもお薬の内服に躊躇される方も多く、そういった背景を考えるとどうしても若い方こそお薬の治療以外の新しい治療のことを知って頂きたい、というふうに考えております。

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