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声がれ

声の嗄れる病気にも色々あります

声の嗄れる病気にも色々ありますが、概ね、手術して治る病気と手術しても治らない、改善しにくい病気があります。

手術して治る病気

使いすぎで起こる、声帯ポリープや声帯結節

声帯ポリープや声帯結節を言われるような病気がこちらです。よく教員の方、保育士の方など、声を時に張り上げて使用されているような場合に起こります。強く絞り出すような声の使い方をしていると、何らかの拍子に声帯の表面に血腫(血マメ)ができるなど、変形のきっかけができます。血腫自体が消退(血マメの中の血は、固まったあと、白血球にたべられて消えていってしまいます)しても、外側の変形した粘膜だけがそのまま残り、また片方の粘膜と常に当たり続けるため大きくなってきます。本来なら声帯がブルブルと震えて声がでる仕組みであるのに、本来の声帯のふるえを邪魔するため、声帯が締まりきらず、かすれて、時に息が漏れるような声になります。声帯結節は、やはり頻繁に声を出し続けるような方に起きることが多くみられます。今度は、血マメというよりは、足の裏のタコのように、声帯に一部分がかなり硬さを伴ったままになって振動しにくい状態になります。

まずは声帯の安静、つまりは声をださないようにということで指導を行います。また、ささやき声であっても、声帯は震えるので、そちらも注意が必要です。が、それでも全然治らない場合は手術を行うこととなります。

全身麻酔で寝てもらっている間にのどへ硬い金属の筒を入れ、こちらで声帯近くを広げ、またこちらに顕微鏡を用いて確認しながら操作を行います。そして声帯の硬い部分をメスなどで削り取るような形で切除します。

胃酸の逆流などの慢性的な刺激による喉頭肉芽腫

こちらは声帯の少し後方、食道に近い部分にできることが多いできものです。長時間に渡る手術や、胃酸が逆流してくる(逆流性食道炎)などすると、その強い刺激や炎症で声帯の後方が膨れて、喉頭ファイバーで確認したときにその隆起した病変として見つかります。また違和感や声の出しにくさ、繰り返す咳払いなどを長期間しているような方で見つかることが多いと考えられています。

治療としては、胃酸の逆流を抑える薬(PPI)やステロイドの吸入、音声治療(声の出し方を穏やかなように変える)などが一般的です。つまり、逆流性食道炎が背景にあり、胃酸が逆流してきて食道の入口付近の粘膜がいじめられて炎症を起こしている場合には、やはりこの胃酸逆流を抑えなければいけません。また、喘息の方に準じて、喘息の吸入薬を使用することでも炎症を抑えて行くと隆起した部分の炎症が鎮まって、小さくなっていくこともあります。そして、保存的治療でも効果が乏しい場合は、外科的治療も選択肢として考えられますが、背景の炎症があまり抑えられていなければ、術後再発率は高いということも同時に知られています。そのため、よほど大きく気道が閉塞するような心配がない、また発声にそれほど影響がない場合には、さほど積極的に手術を勧めない場合もあります。

声帯全体がブヨブヨにむくんだ、ポリープ様声帯

声帯が長年の飲酒や喫煙でだんだんと全体的に声帯の両側ともむくみ、嗄声をきたしているような状態です。特に声帯がきちんと閉じ切らず、さらに声帯の両方とも、ひどくブヨブヨで、ガラガラの声になります。手術では、このむくみを形成している物質を声帯表面から切り込みをいれて押し出すようにしごき、形を整えます。しかし、それでもまた喫煙をやめられないと高率に再発することと、また、禁煙してもらって手術となっても、きれいさっぱり元通りの声にはなかなか戻りません。長年のダメージが蓄積しており、かなりきれいにしたつもりであっても、ブヨブヨしたむくみが全部きれいに取れるわけではないからです。

ちなみに手術の具体的な感じってどんなものでしょうか…??

手術では概ね全身麻酔で行うことが大半ですが、一部の施設では、局所麻酔で行うこともある模様です。

一般的に、指をのどへいれると「オエッ」と、戻しそうになる反射がおきます。これが起きるような状態では、声帯という微細な部位を触ることがなかなかできませんし、また、たくさん出血した場合、気道へ流れ込むとそれだけで強い肺炎を起こす、もしくは血が固まって声帯へ転がり込むと息がつまること(窒息)が起きることもあるため、基本的には患者さんには反射を起こさないように全身麻酔で寝て頂き、気道を確保するために気管へチューブをいれて固定します。チューブの先近くにはカフと呼ばれる風船が存在しており、これを膨らませておきます。もし血が出たとしてもその風船の上にたまって、その部分より奥の肺へ落ち込んでいかないような工夫がされています。手術に伴い出てきた血液と同様につばや痰は風船の上にたまるような構造になっており、そのたまった分は吸引をかければきれいに掃除されるようなしくみになっています。

局所麻酔の場合は、のどに局所麻酔の、粘膜がしびれて鈍感になるような麻酔液をふりかけるようにして、椅子に座った状態で、さらに、顎を持ち上げてのどの奥が広がるような姿勢をとってもらって、喉頭ファイバー(胃カメラののどバージョン)で確認しながら手術操作を行うようです。空を仰ぐように首を反らすのは、長い刀を飲み込むような曲芸などで見られますが、そうすることによって口の入口からのどが一直線になるからです。

また全身麻酔のケースに戻ります。のどが一直線になって視野がきちんと取れるように、全身麻酔をかけてもらってから、こういった姿勢をとるために「直達喉頭鏡」というステンレス製の筒状の道具をのどの奥にいれます。声帯周辺が隠れないように、気道確保用のチューブをずらさないように注意しながらこのステンレス製の筒をそろそろと入れていって固定します。また、その際に強い圧迫の力がその「直達喉頭鏡」によって歯にかかるため、歯が折れないように事前に作っていたマウスピースで歯を保護します。口の方から顕微鏡を用いて声帯を拡大して観察し、また、手元を握ると先が動くようなハサミなどを用いて、のど、声帯の病的な部分に操作を加えます。

手術しても治らない声がれ

喉頭白斑症、喉頭がん(声門がん)

長年の飲酒、喫煙によることが多いのですが、結局、声門であれば、声が嗄れてくるという症状ではっきりとしてきます。声がガラガラ、スカスカとなり、鼻からのぞくカメラ(喉頭ファイバー)をいれると、声帯に一部固そうな白い場所や、隆起した腫瘍性病変がある場合です。

どの臓器でもそうですが、病気が疑わしい場所があれば、食道でも胃でも、まずはカメラで一部をかじり取って検査にだします。これを生検と言います。がんの診療は、まず、病変部分の組織を一部採取して、検査に出し、病理の先生に顕微鏡で組織の特徴を確認していただいて、良性悪性の診断となります。また悪性であれば、どういうタイプなのかということをご診断していただき、悪性だ、どういったタイプだ、という判断が降りた時点で初めて「治療が必要です」というスタートに立つことができます。また、のどの奥は、声帯の問題と同様に、声帯の固そうな場所を取ろうとしても、大体、上記にお示ししたような理由でカメラではとてもえづいて苦しいため、やはり全身麻酔となることが多いと思います。

一部をかじって、検査に出すだけなのですが、先ほどのように、腫瘍をかじったのちに出血して、出血が大変なことになってはいけないため、基本は全身麻酔で通常行うものと思います。生検の結果でがんでなく喉頭白斑症であれば…つまり、がんというほどまでには細胞の悪質な顔つきが目立たない「前がん病変」という状態であれば、定期的に受診してもらい、カメラで病変が拡大してきていないか確認するということになります。また、嬉しい話ではないですが、もしもがんであればステージ(進行の具合)を考え、それに準じて治療を行うこととなります。

ちなみに、この場合、腫瘍が良性か悪性かの判断が問題となりますため、声の改善は二の次となり、実際、声は治りません。硬い部分は硬いままです。また、声門がんの早期のもので、放射線でがん組織を焼き潰すような治療法を行った場合、がん組織がきえても、声帯そのものの硬さは残るので、声のガラガラ具合はあまりきれいにならずに残ります。ステージが進んでいて声帯そのものを取らざるを得ない場合には、残念ですが声を犠牲にせざるを得ません。声帯を含む喉頭そのものを取るという手術を「喉頭摘出」といいますが、この場合、声を出す部分も病気の部分とともに摘出するため、結果として、声を永久に失うことになります。特にお酒とタバコががんと関係深いため、お酒をのみながらタバコを吸うような方で声がかれてきてなかなか治らない、といった場合は放置せず、可能な限り早く受診しましょう。

一側性声帯麻痺、反回神経麻痺

声帯を動かす神経自体が動かなくなってしまった場合、ガラガラというよりは息が漏れるような、スカスカしたような声の出にくさが出現します。この場合、喉頭ファイバーを確認すると、片方の声帯が動いていないといったようなことで診断されます。

耳鼻科の人間にとってはしっかりと対応すべき病気となります。というのは、その神経の走行している部分を考えると各種さまざまな異常を考えなければならないからです。

声帯をうごかしている神経は迷走神経の枝の反回神経と呼ばれる神経です。脳から出てきたあと、首の方へ走っていって、一度胸へたどりつきます。左右で高さは違いますが一度肺の近辺を走行し、また甲状腺の下を通ってのど・声帯へ入るように走行しています。つまり、一度足元の方向にむかって、胸のポイントで折り返して頭の方へまた戻るために、こういった「反回」といった名称がついています。

もし、この反回神経麻痺という形の、片側の声帯が固まったような状態で声がれが出てきた場合、その長い走行部位のいずれかに異常があるはずなので、頚部(くび)だけでなく、胸部(肺や心臓近辺)の確認も必要となります。また、時に脳卒中など脳そのものの異常が原因である場合もあります。

もしがんであれば、のどのがんのリンパ節転移や、甲状腺や食道のがん、肺がんが直接この神経にかみついて神経を潰している場合や、左側だけの声帯麻痺であれば心臓から出た上行大動脈にこぶができており(大動脈瘤)、それが大きくなってきて働きが悪化してきている場合なども考えられます。ですので、片側の声帯だけが固まっていて、のど周辺に異常がない場合は、甲状腺周辺チェック目的に頚部エコー、肺と血管のチェック目的に(造影)CT、食道のチェック目的に上部消化管内視鏡(胃カメラ)といった各種検査を同時並行して行わねばならず、基本的に大きな病院にお願いさせて頂くこととなります。

声帯は普通、両方が閉じて震えて声を出す仕組みになっていますが、この場合片方が動かず、中途半端に開いたままで閉じきることができない状態です。なので、息が漏れるようなスカスカした声の出方が特徴です。勢いよく水を飲むと水がそこに入り込みます。結果、声帯の奥は気管なので、水を飲むたびに水が普段は入るはずのない気管へ流れ込み、強くむせるといったことを繰り返します。「誤嚥」と呼ばれ、これは関西弁では「飲み違え」などと表現します。咳込みができずにそのまま肺に食べ物など異物が残ってしまったような場合は、「誤嚥性肺炎」と呼ばれる、大変強い炎症を引き起こすこともあります。

原因となるがんや血管の病変が治ったとしても、大半の場合、その神経が元通りに動き出すといったことはありません。結局がんによって神経が潰されていた場合や、動脈瘤が大きくなって引きのばされて動かなくなったような場合、その神経が再生することはまず起こりませんので、ガサガサした息が漏れるような声のままとなります。ある程度は逆側の声帯が頑張ってくれるので、少し顎を引いて動いていない方に首を回す(左が麻痺していれば左へ首を回す)と、その声帯の隙間が小さくなり、声が出しやすくなる、誤嚥しにくくなるということがありますが、なかなかずっと首を傾けたまま食事するといったこともできません。そこで、ご希望によっては、この場合麻痺したほうの声帯に注射や薬剤を打ち込むような処置をしたり、甲状軟骨形成術といって、麻痺した声帯を内側へ位置を動かす手術を行ったりする場合がありますが、あくまでこれらは元通りに声帯が両方ともうまく動いていた時のように戻す治療法ではないため、きれいな声を取り戻せるといったものではないということにご注意頂きたいと思います。

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