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のどの異物感

のどの奥の違和感、異物感を感じて受診されるかたは大変多いです。
考えられる代表的な疾患を以下にあげてまいります。

のどのがん

のどのがんも耳鼻科としては色々と区分が細かくありますが、例えば喉頭がんの中でも特に声帯そのものにできるような場合は、明らかに声がかすれてきて、ガラガラ声と表現されるように特徴的な声のかすれ方を起こすため、「これはおかしいな」と、受診していただきやすい傾向があります。

がらがら声がなかなか治らない、ということで受診いただけて、そのために比較的早期にみつかることが多いです。結果として、その声を出す場所である声帯のがんならば早期発見が多く、また早期発見ができていれば放射線治療で声も残せて治療成績もよいのですが、その他ののどの部位にできるタイプのがんは、残念ながらなかなか見つかりにくいものがあります。特にこれといった特徴なく、時に何となく熱いものがしみる感覚があるなあ…と思っていたら、そのうち首にしこりができていることに気が付き、痛くないのにだんだんと膨れてきたなあ…といったようなことが起きます。ようやく受診した際にはそこそこの広がりを伴った進行がんだったというようなことも稀ではありません。

お酒、タバコを割と多く長年好まれてきた方、またお酒を飲みながらタバコを吸う、といった習慣のあるまま長年経過してきた方の場合はやはり注意が必要です。また、のどの奥のがんであるのに、のど自体には全然痛みが出ず、耳の痛みとして感じられるといったこともまれにあります。

甲状腺腫瘍

甲状腺には「しこり・できもの」ができることがあります。良性でも悪性でも、だんだんと大きくなれば、目立ってきます。甲状腺は、消化管などの内臓の内部とは違い、比較的わかり易い場所にあるため、もしそういった病変ができてくれば目立ちやすく見つかりやすいところでもあります。

胃の中は胃カメラをしないとわからないのに対して、甲状腺はいわゆる、「蝶ネクタイ」をイメージしていただくと近いと思いますが、首の前面やや下にチョウチョのような形で存在しており、もし何か出っ張ってくれば触れてしまう、鏡を見れば映る…というような、わかりやすさがあります。

また、腫瘍ではなくとも、甲状腺には「嚢胞:のうほう」と言って、全く周りを潰さず、影響を与えないものの、水風船のように液体だけが貯まるような疾患が存在します。特に食道は甲状腺のレベルでは左側を走っており、こちら側でもし大きな嚢胞ができればつばを飲み込むときに違和感を生じるといったことが起きます。エコーを行えばすぐにわかります。

胃酸の逆流

逆流性食道炎などとも言うように、いかにも「苦くて酸っぱい水が上がってくる」といったような強い逆流があった場合、のどの奥や食道の入口周辺の組織を逆流してきた胃酸がいじめるということがあります。胃カメラでは食道のただれや、食道の入口にびらんや赤身を伴う炎症を生じている、という所見が見られることがあります。多量の胃酸逆流の場合は、やはりいかにも食欲低下や胃もたれ、胃酸逆流の自覚=少量の嘔吐のような症状も起きます。

ただ、そういった形で、わかりやすく胃酸が逆流してきているとご自身で感じられたり、客観的に誰がみてもわかるくらいダメージを受けているような特徴があったり…といったことが全然ない場合もあります。こういった場合、のどの周囲に違和感・つまった感じ、飲み込みがスムーズにいかないといったような感覚を誘発します。

これは「非びらん性胃食道逆流症」といって、食道やのどの粘膜のびらんや潰瘍などの、目に見える炎症を伴わないタイプです。これを疑った場合、プロトンポンプ阻害薬(PPI : Proton Pump Inhibitor)という胃酸の分泌を抑える薬を飲んで、症状が改善するかを確認する検査を行います。薬を2週間程度飲み続けながら、時間経過とともに改善の様子をみます。

夜遅くまで仕事をしていて、食事をとってからすぐの睡眠となりがちの方などは、食事が十分に胃で消化されないうちに仰向けで睡眠の姿勢をとるため、胃の内容物が逆流しやすく、こういったことを起こしやすい傾向にあります。また、コックさんなど、飲食業の方などは、実際にお食事を調理していると、視覚・嗅覚の情報として胃酸分泌を促す刺激がたくさん入って来るのに、いつまでも食事が入ってこないために胃酸過多の状態となってしまうことがあります。体は食事を取る用意がすでに仕上がっているのに、食べ物が全然入ってこないと、ずっと胃酸が出続けてしまい、それが続くとこういった症状を起こすことがあると言われています。

さらに、こういった胃酸逆流については、時に「喉頭肉芽腫」というような、声帯の後方で炎症を起こした結果、声帯の振動を邪魔するような形で膨らんで、声が嗄れるような疾患の原因となることもおこります。

睡眠時無呼吸症候群

朝起きた時口が乾いている、パサパサとのどがねばつく感じがあるということが多ければ、一度無呼吸の検査をうけてみませんか。特に、以前からいびきを指摘されているような方や、20歳くらいの頃より10kg程度体重が増えたといったような方であれば、尚この病気の可能性があがります。寝ている間のいびきは、口が開いたままになっていることが多く、口臭の原因ともなります。最悪、重症であれば寿命が縮む病気にかかる可能性も高く、安心のためにも評価を受けていただくことが肝要です。

他のページでも説明していますが、のどの奥が陰圧=つまり布団圧縮袋の中身のように内向きの圧力がかかるため、胃の内容物がのどの奥に吸い上げられる形で、胃酸の逆流をきたし、ついさきほど上で読んでいただいたのどの症状が起きることもあります。最近ではスマートウォッチやスマホアプリでも簡単な評価ができますので、もしそれで結構ないびきをかいているようであれば、ご相談ください。

メンタルのお薬を服用している方、飲酒

メンタル系のお薬のなかには、筋肉をほぐす作用・緊張を軽減する作用が強いものがあります。つまり、緊張をほぐす、筋弛緩作用を伴うものがあります。これらは、耳鼻科領域では、舌がだらんとなるような方向へ力を発揮します。また、お酒を多く飲んだ時にも同様で、これが睡眠中に息の通り道を狭める方向に働くことが起きます。

やや肥満の方や下顎の小さい方がこの状態で寝ついてしまった場合、ゆるまった舌の付け根の筋肉が、のどの奥の空気の通り道を蓋をするようにはまりこむ状態、つまり無呼吸発作が生じて、実質的に睡眠時無呼吸症候群と同様の状態が起きてしまうことがあります。定期的にメンタルのお薬を内服しないといけないような方で、口腔内が起きた時にねばっこい、ぱさつく、いびきが増えたといったようなことがあれば、ぜひ検査をご検討ください。特に、メンタルの疾患をお持ちの方は、休養が大切な治療の一環となる時期なのに、そうしてしっかりした休養が取れないという悪循環にはまってしまうこともたびたび起こります。

扁桃の膿栓:クサ玉、ニオイ玉

稀に、のどの奥からニオイの強い白い塊が出てくることを経験することがあると思います。これは正式名称では「膿栓」といいます。扁桃腺(これも正式名称では、「口蓋扁桃」といいます)の表面に白い塊が付着しており、気になって取ってほしいということでご来院いただくことも時に経験します。

口を開けて左右に見えるこの「口蓋扁桃」ですが、表面は決してつるんとしたものではなく、溝がたくさんついており、意外とデコボコした構造をもっています。こちらのデコボコには「扁桃陰窩:へんとういんか」という名前がついています。こちらの溝に、老廃物(免疫反応の結果や、剥落してきた粘膜)が貯まって、なかなか出てこられなくなった状態が続くと、口をあけた時に白い塊として見えることがあります。生きている限り爪が延び、フケが出て、垢が出るのと同様に、この扁桃陰窩にも老廃物はたまります。おそらく大半の場合、あまり気がつくことなく飲み込んでいることもあると思われます。パッと出てきた時、とてもニオイが強く、口臭の原因となっていることは言わずもがなと思います。また、膿栓が見える状態でなくとも、扁桃の周囲を圧迫すると、隠れていたようなこの膿栓が押し出されて出てくることもあります。こちらを吸引、清掃すると違和感や口臭が消えるということも日常診療ではよく経験します。

そして、こちらの老廃物は生きている限り生産され続けるため、別に歯石をとろうが、口腔クリーニングを頑張ろうが、できる時はでき、できない時にはできません。たまたま狭いところで垢がたまってきた、おへそのゴマのようなものといっても差し支えないと思います。口呼吸は多少は関係あるかもしれませんが、じゃあ、きちんと鼻呼吸ができていないからと言ってしょっちゅうできるというわけでもないと思われます。

歯科で膿栓の解説をしているホームページを読んでいると、大半がなぜか「できないように口腔内を清潔に保ちましょう」とばかりに、口腔クリーニングや歯のケア商品への誘導になっていることもあり、個人的にはいかがなものかと存じます。また、他院のホームページには「食べカス」でできると記載がある場合もありますが、本物の食べカスなら、食べ物由来の色を見ることもあってもおかしくないと思いますが、一様に白色です。ゆるいやわらかなチーズのような感触です。

耳鼻科の医師ならば、扁桃腺を取る手術で、開口器をかけて局所麻酔を打った時や扁桃を触って組織の確認を行っているうちに膜の奥からムニュムニュと出てくる膿栓を見かけることが普通にあります(ただし、この膿栓が貯まるからという理由で扁桃腺を取る手術をお勧めするようなことはまずないように思います…)。のどの違和感をお持ちでいる方には、医師側としては診察の際に扁桃の外側を圧迫するという方法は、試しておきたいひとつの方法でもあります。

ただ、この処置は残念ながら指をのどに突っ込んだ時に「おえっ」と嘔吐しそうになる、「咽頭反射」とセットでありますので、食後すぐの方にはお勧めできません。もちろん、試験的に扁桃を圧迫する前は、これらのことを説明してから処置するようにしております。

加齢

お年を召された方の場合、どうしても、つばの分泌が少なくなります。唾液は健康な成人の場合、1日あたり1リットル前後出るというようなことになっていますが、これは段々と加齢によって減少してきます。

また、ご自身の歯が段々と抜けていくようなこともあり、大多数の高齢者が義歯=入れ歯を使用されていることが多いと思いますし、実際、義歯ではものをしっかり噛むということが難しくなってくる傾向があります。そうすると段々とものを噛む筋肉自体があまり使われないため衰えていき、寝ている間の大半の時間、口が開いたままになっていることが起きてしまいます。ただでさえ唾液量が減少してくる上に、口が開いたままでは、余計乾燥してしまう…ということがおきます。

唾液分泌を促すための唾液腺マッサージ、残った歯を少しでも健康で残すための歯科でのクリーニング、ドライマウス対策の保湿ゼリーなどの購入がお勧めです。

鼻閉 口呼吸

アレルギー性鼻炎」のページにも記載しておりますが、鼻づまりが強いとどうしても口呼吸となり、口腔内は乾燥してしまいます。結果、いつもと違う違和感、気持ち悪い粘り付きを感じることもあります。はやくに原因を見極め、元気に毎日暮らせるようにどうぞ放置せず、受診いただくようにお願いします。

シェーグレン症候群

ドライマウスの原因としてシェーグレン症候群という名前の疾患があります。本来、免疫というものは異物に対して攻撃を行うものですが、この病気の場合、自分の組織、特に唾液を作る唾液腺に対する攻撃が自己抗体によって起こります。結果的に免疫が間違えて自分なのに自分の唾液腺を攻撃するためにつぶされていってしまい、唾液の分泌量が著しく減り、常に口腔内の乾燥した状況となります。また本来は口腔内を清潔に保ってくれている唾液が減るために虫歯が増えるなどの実害が出ます。

診断基準もありますが、そういう自己抗体の採血中の確認と、耳鼻科としては最終的には生検と言って、口唇粘膜の唾液腺を一部かじりとる検査目的の手術を行います。顕微鏡の検査で白血球が実際に唾液腺を攻撃している像が確認されれば診断確定となります。またこの病気は膠原病の一種ですので、他の内臓に病変がないか、他の膠原病を合併してはいないかということで検査が必要となります。

メンタル性の違和感

病気がないか気になる、と言ったような感覚に歯止めが効かないようになり、頻繁に受診して、安心しないと落ち着かないということが起こったりする方がまれにいらっしゃいます。のどをカメラでのぞき、その画像を見ていただいて病変がないということを納得しても、また数日〜数週間程度経過すると、また気になって仕方がなくなってくる…というようなケースもあります。

この場合は、メンタルが落ち着く薬を内服していただくか、また、半夏厚朴湯という、のどを中心に東洋医学的に気の流れを整えてくれるというお薬を飲んでいただくことが多いです。半夏厚朴湯は、昔々の中国の東洋医学の教科書には「咽中炙臠(いんちゅうしゃれん):のどの中に炙った肉がひっかかっている感じ」、「梅核気:梅の種(核)がのどにひっかかったような感じ」といった違和感に効果があるというような記載がされています。色々と検査して病気がないといわれてもひたすらつまるような感覚が消えない方には効果的ではないでしょうか。

 

他にまだ色々と可能性はありますが、のどがつまる感じや違和感を引き起こす疾患の代表は以上となります。気になるようであれば、一度ご来院して相談してみてください。

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