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滲出性中耳炎

痛くなくとも、静かに進んで行く中耳炎、それが滲出性中耳炎

滲出性中耳炎とは

鼓膜よりもまだ奥の「中耳」と呼ばれるところに、細菌感染などにより炎症(急性中耳炎)が起こり、その後、その治る過程で「滲出液(しんしゅつえき)」と呼ばれる、もともとはうみであった液体がたまっている状態のことを言います。
急性中耳炎以外でも、風邪をひいたあとにも起きることがあります。

この液は、うみから活動性のバイキンが消えたような液体です。
本来ならこの鼓膜の奥にたまった液体は、鼻の奥へとつながるトンネル:耳管(じかん)を経由して鼻の奥へ流れていくはずなのですが、それがうまくいかずに、鼓膜の裏の空間にたまったままの状態となることがあります。
そのため、音がはいってきても鼓膜そのものがうまく震えることができず、結果として音を拾うことができません。まるで耳栓をしたような聞こえにくさが自覚症状として現れます。
急性中耳炎にかかって、その後に痛みや熱はひいても、なかなか聞こえにくさが改善しないといったときに、耳を確認すると、鼓膜のむこうにそういった水や水泡が透けて見えることがあり、それが診断の根拠となります。

特に幼児や小児の場合、鼻の奥のトンネルの出口側で、大きく膨れたアデノイドがその流れをとおせんぼのように邪魔をしている場合があります。
そもそも、鼓膜の奥と鼻の奥は「耳管」というトンネルのような管でつながっています。
アデノイドが大きいと、耳管の出口がふさがれてしまい、この滲出液の排出をさまたげるために、なかなか治らない原因となっている場合があります
アデノイドが大きくなくても、鼻すすりを繰り返すクセが原因で耳管の出口がへしゃげて交通が悪くなっている場合があります。
特に4歳くらいまでのお子様の場合は、あまり聞こえにくいという感覚にならず、テレビや動画の音量を大きくしがちということで気づかれることがあります。
治療を行わないと、聞こえや共鳴の助けとなる耳の後ろの頭蓋骨の小さなほら穴(=乳突蜂巣:にゅうとつほうそう)の成長の妨げにもなり、他でも説明しますが、手術が必要となる「真珠腫性中耳炎」という病気に将来的に進展していくこともあり、しっかりした治療を行う必要があります。(※乳突蜂巣:耳管とともに、耳の奥の気圧変化の調整を行うとともに、音の共鳴を行い増幅させて耳の奥へ音の情報がよく届く手助けをしていると考えられています。)
また、大人の場合ではアデノイドはほぼ退化して縮小しているはずなのですが、片方だけの滲出性中耳炎の場合ですと、鼻の一番後ろの壁、上咽頭といわれる場所で腫瘍が存在し、それが鼻側の耳管の開口部(耳管咽頭口)を塞いでいることがまれながらあるため、鼻からファイバーで確認する必要があるとされています。

治療

処置による治療…通気、空気通し

通気処置というものがあり、これは鼻から耳管を経由して、耳の奥、鼓膜の裏へ空気を送り込む治療法です。耳と鼻の奥を繋ぐ、耳管という管があり、これがスポイトで水を吸う時のような形のままになって、へしゃげたまま固定されていることがあります。そうなると鼓膜よりも奥の水分は鼻の奥へ流れていってくれません。
そこで、空気を送り込んで、その分溜まっていた水が交換されて出てきてくれれば、鼓膜の振動が次第に回復し、聴力が回復するという理屈です。
お子様の場合は「ラッパ!」「ガッコ!」と言ってもらい、そのタイミングで鼻に空気を送り込みます。成人では、カテーテルと呼ばれる金属の管を用いて空気を耳管咽頭口、つまり鼻の奥から耳へ空気を送り込みます。
また自己通気といって、風船(オトベント)、吹き戻しを吹いてもらうことがあります。週に2回程度の頻度で、継続して処置を行うことが多いと思います。
しっかり効くという確たる証拠が証明しにくいため、「エビデンスに乏しい」という表現がされやすい傾向があるようですが、当院では行うようにしております。

お薬による治療:まず、鼻をすすらずよくかむ癖をつけることが第一!

鼻をすすると、耳の奥全体に陰圧とよばれる内向きの圧力が発生します。スポイトで水を吸い上げるように、鼓膜の奥に鼻水や浸出液が吸い上げられるようにあつまってしまいなかなか治りません。鼻をすすらなくてすむようにアレルギー性鼻炎があればその治療をしっかり行うことがまずは大切です。
また、抗菌薬にクラリスロマイシンというものがありますが、あえて少量で長期間使用してもらうことで、殺菌力よりも、掃除のちからが発揮されるというお薬があります。たまった浸出液が掃除される、排出されていくことを期待して、このような服用の仕方をしてもらうことがあります。また、カルボシステインという、鼓膜の奥にたまった粘っこい滲出液の排出を促すための粘液融解剤を服用していただきます。

手術

なかなか治らない場合は手術をお勧めすることになります。
鼓膜に小さな穴をあけ、鼓膜の裏にたまった滲出液を人為的に外へ排出すれば、鼓膜の震えが改善し、聞こえが改善するという理屈です。じっとしていられるなら、小学生でも局所麻酔で行います。
これも一回で改善する場合もあれば、そうでない場合もあり、鼓膜の裏に溜まった水分を排出して改善しても、ご自身の治癒力で鼓膜の穴がふさがり、その後もまた滲出液が溜まって聞こえなくなるようなことが繰り返して起きるような状態であれば、穴が塞がらないようにチューブを置くことがあります。
また、幼児、小児の場合で、アデノイドが明らかに大きく耳管の鼻側を塞いでいる場合では、アデノイドを手術で取り、同時にチューブを留置することも多いです。
時間が経過すれば体の成長とともにアデノイドが自然に縮む場合もありますが、「自然に縮む」まで一体どれくらいかかるかわからないことが多く、利益・不利益と相談して手術をおすすめすることが大半です。特に、口呼吸・いびきが強く続いており、睡眠不足の悪影響が疑われるような場合は手術を強くお勧めしています。

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