口内炎
放置してはいけない口内炎
たいていの口内炎はすぐに治る!治らない口内炎には注意!
特に何があるわけでもなく、口内炎ができることはよくあります。もしかしたら、口の中の粘膜を噛んだ、やけどした、そういったことがきっかけで、もしくは疲れや睡眠不足がきっかけとなって、小さな白いポッチが口の中にできて、小さいくせにやたら痛いということは多々あります。ただそうは言っても、大半の方が、数日単位で概ね痛みが落ち着いてくるようなことをよくご経験したことがあるのではないでしょうか。
ここで強調しておきたいのは「2週間経っても治らないような口内炎はおかしい」ということです。例えば、どんな病気も最初は風邪のような、いかにもよくある病気の顔つきをして現れてきますが、それと同様に、口腔がんの初期は基本的に口内炎の顔つきで現れてきます。
つまり、全然、治らないまま段々と大きくなってくる、食事の時にしみる、ほれこみが深くなって目立ってくるなど、明らかにおかしな経過をたどってきます。また、ほれこみの中心が深くなって、周辺の組織にひきつれのようなシワがよったり、もしくはまわりよりせりだして目立ってきたり、さらに硬いしこりがある、何か硬い食べものがふれるとすぐに出血するなどのような特徴があればますます危険なサインです。すぐに受診してください。
特に、今まで長年喫煙をしている、飲酒量が多い、またはその両方といったような方であったり、尖った歯と舌・頬の粘膜が長期間接触していたりすると、そのような場所に、そういった口内炎がもしもできていたりした場合はやはり危険で、普通の治りよい口内炎よりも悪性の可能性が増します。悪い歯並びや虫歯があったりするせいで、歯に少し尖ったような部分があった場合、そことずっと接触している場所は、その接触の刺激でがんが発生することがあります。また、特に歯に病気もさほどないのに、歯がぐらついて、といった場合も、歯肉のがんの場合もありえます。
こういったしこりや潰瘍のようなほれこみができてきた場合、「生検」と言って、局所麻酔をして、そのしこりを一部切りとって、組織を「病理検査」という、細胞の性質を調べる検査に提出して、詳しく調べる必要があります。
口の中のがんは、食事・味覚・声や呼吸など、もし病気が進行していた場合に、人間の基本的な機能の障害、損傷、低下が著しく、もしもなったとしても「早期発見、早期治療」が確実にものを言う病気です。仮にがんという怖い病気であったとしても、やはり病巣が小さいうちに、きちんとした治療を行えば大いに勝算があります。ありふれた病気として認識されている口内炎ではありますが、もしもできてなかなか治らないとしたら、放置されることのないようにお願いしたいところです。
そして、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の啓発ページにも、同様の内容でお話が掲載されています。一度ぜひごらんください。
口内炎の原因はビタミン不足??
昔はおそらく栄養失調を始め、明らかにビタミン不足で起きたようなことも疑われるような口内炎も多かったのかもしれません。そのような背景もあり、今も口内炎にはビタミンB製剤などがよく使用されています。ただ、極端な栄養失調や、胃の全摘をした結果ビタミンBを取り込む機能が著しく低下していない限りはそこまでビタミンの補充は必要ないのかもしれないと考えています。
それよりもよく使用されるのはステロイド剤の軟膏です。口の中の粘膜に付着するように、少し粘り気のある形で加工されています。軟膏を塗ったあと、会話したりすると、結局唾液で洗い流されていってしまいますが、こういった軟膏で少しでも傷口を保護するほうがよいと考えます。というのは、唾液の中にはアミラーゼという消化酵素が含まれており、これによって傷口周辺の組織が分解される、つまり、体が治ろうとする働きをさまたげられて、いじめられてしまうとまた鋭い痛みにつながるからです。同様に、当然、酸っぱいもの、辛いもの、熱いものは避けるべきということは誰でもわかると思います。
口内炎のときにはイソジンはよくない…??
イソジンのうがい薬には、強い消毒作用を持っていると考えられていますが、口の中の粘膜に炎症があって、傷口の損傷があるような状態であれば、その消毒の作用が強い刺激となり、傷口が治ろうとする力を妨げるように働いてしまうと考えられています。それよりは、アズノールうがい液や、アズノール系のトローチなどで傷口を保護するようにして経過を見ていくほうがよいと考え、イソジンのお薬は使用を避けて頂くようにお話させて頂いております。
口内炎に効果のある漢方薬はありますか
最近よく使用されているのは、「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」と言うお薬です。この伝統的な漢方薬には、口内炎や、胃腸の障害を改善する働きがあり、今までも広く使用されてきました。正直言って苦いお薬ではありますが、こちらをぬるま湯に溶かして、ゆっくり口に含むようにして飲んで頂くと、傷口に対してより直接的に効果を発揮してくれるのではないかと考えられています。
特にこのお薬は、炎症の際に細胞から放出される化学物質を抑制したり、抗菌作用を発揮したりしてくれる効能を持つ生薬が多数含まれています。また、口の中の粘膜において、正常な細胞の修復を促しても、がん細胞の増殖を増やすことはないと言う特徴が確認されています。
現在、抗がん剤の投与や放射線照射などで起きる副作用としての粘膜障害、口内炎に効果が確認されており、国内でも広く一般的に病院のがん治療の現場で使用されています。